ゆめをたべてく

いろんな好きを掛け持ちする飽き性

原作『君は月夜に光り輝く』&『+Fragments』

長くなったので読書録とは分けました。

 

3.『君は月夜に光り輝く佐野徹夜

映画鑑賞後の原作なのでどうしても比べながらになるし、「映画と全然違うやん…!」という驚きが第一感想みたいなものになるんだけど、でもとてもとても素敵な作品でした。好きな本になりました。2時間くらいでさくっと読めて、読後感もとてもいい。登場人物がみんな人間くさくて、そしてこれがデビュー作である作者さんのこの文体?言葉の積み重ね方みたいなものもまだ“プロっぽくない”というか、なんだろう、口語っぽいのかな、難しい言葉とか「文章」としての日本語よりも「感情」や「感覚」に近い日本語で形成されてる小説で、そういう不器用な雰囲気がとてもよかった。

原作は映画よりもずっと、「死」を身近に抱き寄せてる人たちの話だった。半分くらい「死」に浸かって生きてる、みたいな。ほの暗くて、後悔とか悲しみとか、そういうことを思うエネルギーもないような、「諦め」の雰囲気が全体に漂ってる。でもその中でまみずとの出会いが卓也を変えるし、卓也との出会いもまみずを変える。だからといってきっと、卓也の人格がゴロッと変わるわけでもないんだろうな。いろんなこと「めんどくせぇな」とか普通に思って、生きてくんだろう。でも、“恩人”だとラベル付けしていた香山の存在が“友達”になったり、生きることの後ろめたさがなくなって、前より少しだけ明るく、自分の意思でこの世界を歩いて生きていく。月夜に光り輝くまみずが心の中に生きてるから。彼女が見たかった世界の続きだから。

映画は美男美女が演じてることもあってその想いや愛に「美しさ」や「尊さ」みたいなものが全体の雰囲気としてあったけど、原作はもっと泥臭くて、現実的で、ネガティブな感情もしつこく渦巻いてて、偉そうな一貫性とかもないけど、でも人間を描いてる感じがとてもした。人ってそうだよな、間違えるし、病むし、壊れるし、でも、変わることもできる。まみずからもたらされた光は月明かりのように淡いものかもしれないけど、そして世界は相変わらずつまらないかもしれないけど、でも生きてくことは幸せに繋がってると思えるようなお話だった。

大まかな設定や、ところどころに出てくるエピソードや台詞は同じなんだけど、キャラや展開(順番)が全然違ってほんとびっくりした。香山と卓也の関係性や、香山兄の設定、鳴子の気持ちはより明確に描かれてたり、何より卓也の人物像と、2度目の屋上のシーン!!! よくこの原作でこのシーンとこの行動落としたな!(笑) でもあの卓也の行動を描くならその前のベランダのシーンを入れずにはおれないし、そこを入れるなら香山との関係を描かずにはいられない。となると足りないんだよな、尺が。たぶん。映画は映画で大好きだし原作の方の流れもめちゃくちゃ好きで、なんていうの…双方にすごいなと思った…。この原作を一度分解して月川エッセンス入れて再構築したのが映画なんだな…とつくづく思う。原作を実写化する作業ってほんと面白い。そしてこれはこれで、この原作通りの展開の連ドラを観てみたい。香山はどうか坂東龍汰くんで…そのイメージでずっと読んでた。卓也は匠海くんのイメージというより『死にたい子どもたち』のノブオのイメージ……いや完全にいろいろ混合してるし結局北村匠海なんだけど、感覚として。リコちゃんショートカットだし葵わかなちゃんとかかな。

あ、でも映画の中でさりげなく卓也の部屋に亀がいたことに気付いてて、その答えみたいなものが原作にあってちょっと嬉しかった。「まみず」呼びの背景にそんな切ないエピソードあったとは…って感じだったし、「まみず」って名前の由来はミッチー演じたあのお父さんの声で再生されて笑った。

とにかく大変素敵な物語でした。続編も買ってこよう。(3/21読了)

 

4.『君は月夜に光り輝く +Fragments』佐野徹夜

fragment=断片、欠片。その名の通りキミツキの続編ともいえる、同一キャラクターたちの短編。(映画版)卓也の医学生設定はここからかな。

面白かったです。前半4本はキミツキの後日談や前日譚、裏側…というか視点の変わったキミツキという感じで、より深く登場人物の心の内を知ることが出来る話。まみずの独白はなかなか切なかったり、まみずが「死にたい」って感情に至るまでの段階が描かれてて発光病ってほんとに残酷な病気なんだなと思った。映画の台詞にもあった「生きることへの執着」に「可能性」もあるというのは言われてみれば当たり前なのだけど、ハッとするところでもある。『〜黒歴史ノート』はほんとに可愛くて幸せな2人。ほほえましい。

『ユーリと声』 この香山やユーリや声は、無印キミツキよりも、より「死」について寄り添って感じて生きてる、って感覚があった。実際死者を感じてしまっているしな……。映画の香山も立場だけ見るとともすればいろんなものを背負ってしまいそうな位置に立ってたけど、原作はより一層いろんなことがまとわりついていそうで、でもそれを諦めて見ないふりをして視野を狭めて生きているような。感情を殺して生きてきたような。「忘れる」ことが裏切りに思えるくらい、自分よりも他人を大事にしてしまう人なのかもしれないな、本来の香山って。

最後のレンタカーに乗ってる香山と声のシーンはどことなく未来っぽいというか、なんだかんだで香山33歳、声が24歳くらいで結婚直前くらいなのかな、と思わせる雰囲気があった。まぁ私の願望込みなんだけども。2人に結婚してほしい……結婚式とかはしなさそうだけど卓也にだけは一応報告するでしょ…「香山からまさかこんな報告受ける日が来るとは」ってなる卓也さんください…。

『海を抱きしめて』 卓也が医学生になって、まみずを忘れずに生きていけることに安堵してたのがすごく印象的。「忘れていく」自分に絶望する気持ちってあるんだよな…。31歳になってもまみずと生きていて、ほんとにこの2人は“ある種これ以上ないハッピーエンド”だったんだなぁと思った。でもやっぱり「君と一緒に喜べたらいいのに」のところは泣いた……。まみずが病気じゃなかったらきっとこの形では出会ってないし恋をしていない2人なんだけど、それでもまみずの死は悲しい。そんな夜もある卓也が切ない。

原作やこの本を読んでから映画観たらより一層理解が深まりそうだなと思う反面、映画の時間なんかじゃ足りないからやっぱり原作ベースで連ドラ化しようぜ!!!!という気持ちが沸いてきている。てゆうか連ドラ絶対やるでしょこれ……こんなコンテンツ逃さないでしょテレビ局…と思うんだけど、どうなんだろうな。いじめとかあれやこれやの表現って、今いろいろ難しいんだろうか。

とにかくキミツキ同様とても好きな作品となりました。ユーリと声に関してはもっと考察を深めたい。これだけでもスピンオフ作ってほしいなぁ………ユーリはミムラさん、声は横溝菜帆さんのイメージです。

また大切にしたい作品がひとつ増えて嬉しい限り。これだけいろんなエンタメが溢れている中で、好きだと思える作品に出会えるのってほんと人と人との出会いのように、奇跡のような、日常のような、面白くて素敵なことだなぁと思います。(4/1読了)